テクニカル分析とファンダメンタルズ分析【トレーダーに必要なのは?】

「テクニカル分析とファンダメンタルズ分析はどっちが有効か?」という議論に、答えようとするならば、

「相場を動かしているのは、経済なのか?それとも人間の心理なのか?」

と考えてみると、実際にトレード経験のある人にとっては分かりやすいかもしれません。
長年FXのトレードをしてきた僕にとっては、相場を動かしているのは明らかに「人間心理」だと思います。少なくとも短期的にはそうです。

人間の「お金を求める欲望」と「お金を失うことに対する恐怖」とがぶつかり合うのが相場というものです。

もちろん、長期的には相場はファンダメンタルズに収れんしていくわけですが、短期的には明らかに人間心理によってレートが形成されるので、「相場の今」を映し出すチャートを基にトレードの判断を下す方が理に叶っていると思います。

テクニカル分析とファンダメンタルズ分析の議論は昔の話

テクニカル分析とファンダメンタルズ分析の議論は昔の話

僕が先物取引会社で働き始めた90年代中頃は、まだインターネットが普及する前でした。

その当時も、社内のディーリングルームの端末だけは、電話回線を通して各取引所と繋がっており、「リアルタイム」でチャートが表示されていましたが、ディーリングルーム以外の端末はそうはいかず、僕たち社員はゴールドやトウモロコシなどの始値と終値、高値と安値を調べては、毎日「方眼用紙に手書き」でチャートを付けていました。

チャートを手書きするなんて、今の若い人にとっては信じられないことのように思うかもしれませんが、当時はそれが当たり前だったので、特に苦だとも感じませんでした。

チャートは、もちろん日足よりも短いものはありません。
今のように4時間足や1時間足、ましてや5分足など想像すら出来ませんでした(笑)

日足のみ、当然インジケーターもなかった当時は、チャートから得られる情報が、今とは比べ物にならないほど少なかったんです

株で例えてみると分かりやすい

「方眼用紙の手書きチャート」しかなかった当時は、テクニカル分析派とファンダメンタルズ分析派が議論を戦わすことが多々ありました。
しかも、どちらかと言えば「チャーチスト」が「ファンダメンタリスト」にバカにされることさえあったような気がします。

そんな時代ではあったんですが、それでも僕は当時から「テクニカル分析派」だったんです。
理由は、「株価が毎日、毎分毎秒、価格が変化している」からでした。

株の場合でいうファンダメンタルズは、企業業績です。
基本的には、四半期ごとに発表される決算以外にその企業の業績を知ることは不可能です。
それにもかかわらず、株価は毎日激しく変動します。

もし、ファンダメンタルズが効果的に機能するのであれば、株価は決算発表や何らかのニュースがあった時以外に動いてはいけないはずです。
でも株価は動く…。
新しい情報がなくて、いったい何を基準に株価は動くのか?

その答えは、使い古された言葉ではありますが、「人が上がると思うから上がり、下がると思うから下がる」です。

つまり、相場の短期的な値動きはファンダメンタルズではなく、人間の心理によって動かされているということになります。

チャートにはパターンがある

「チャートとは、人間の心の動きを記録したもの」なんです。
チャートには、相場を取り巻く群衆の心の軌跡が正確に記録されています。

そして、面白いことに「チャートは往々にして似たようなカタチを描く」ことにテクニカル分析者は気付きます。

これはどういうことかと言うと、「人間という生き物は、似たような状況に追い込まれると、似たような行動をする」。それがチャートのカタチに表れている、ということです。

コンピュータがチャートを描き、人間の心の動きを目に見える形にした結果、株価や為替レートを動かしているのは群集心理だということが証明されたわけです。

「チャーチスト」が「ファンダメンタリスト」にバカにされていたのは、コンピュータが普及する以前の遥か昔の話です。



FXトレーダーに必要なのはテクニカル分析と「得意のチャートパターン」

FXトレーダーに必要なのはチャート。つまりテクニカル分析

FXトレーダーは、「今この瞬間」の為替レートをトレードしてるので、チャートがないことには始まりませんが、他のトレーダーたちもだいたい同じようなチャートを見ています。専業トレーダーのようにチャートの前に張り付いていたとしても、それだけでは優位性を発揮することは出来ません。

ライバルよりも優位な立場に立つためには、「自分だけが知っている何か」を見つける必要が」あります

自分が得意なチャートパターンを見つけること

勝てるトレーダーは、ほぼ間違いなく「自分の得意なチャートパターン」を持っているものです。
そして、そのパターンが現れるまでは、むやみに仕掛けたりはしません。

先に、「チャートにはいくつかのパターン」が存在すると書きましたが、パターンをいくつか発見していくと、その中に「何となく自分の感覚に合うカタチ」が見つかります。

僕はトレード中、自分の好きなチャートのカタチが現れるのをひたすら待っています
ごく稀に、チャートを開いた瞬間にそのカタチに出会うこともありますが、ほとんどの場合は、ただじっと待っているだけです。

トレーダーという職業は、ある意味「待つのが仕事」だと言えるかもしれません。

ファンダメンタルズは頭の片隅に置いておく

ファンダメンタルズは頭の片隅に置いておけばいい

ここまで見てきたように、今の時代に「テクニカル分析とファンダメンタルズ分析はどっちが有効か?」と議論していること自体がすでに時代遅れなわけですが、かといって「ファンダメンタルズを完全に無視してもいいのか」というと、そういうわけにもいかないんです。

短期的な為替レートが人間の心理によって動かされることは間違いないのですが、欲望や恐怖に駆られた時の人間は、往々にして「行き過ぎることがある」からです。
チャートの上値や下値に頻繫に現れる「長いヒゲ」は、まさに人間心理が「行き過ぎる」ことを証明しています。

雇用統計発表直後の激しい上下動は、欲に駆られ右往左往する人間心理の表れ

で、レートが行き過ぎた結果どうなるかというと、「本来あるべき価格」に戻ろうとします。
その際に、経済の基礎的条件、つまり「ファンダメンタルズによる本来あるべき価格」に戻ろうとする習性があるんです。

分かりやすい例えとしては、雇用統計の発表直後に、大きく動いたチャートが短期的、あるいは時間をかけて元の値位置まで戻ったり、またある時はそれを通り越してさらに行き過ぎる場合があります。

このような現象は、「ファンダメンタルズ的に適正なレートを求めて、人間の心理が右往左往している状態」なんです。

「上なのか?下なのか?発表された数字による適正な為替レートはどっちなんだ?」といったように…。

現代のトレーダーは、チャートにすべてが表れることを信じてトレードしているわけですが、「相場は人間心理によって常に行き過ぎ、そして、ファンダメンタルズ的な適正価格に戻ろうとする習性がある」ことを、頭の片隅に置きながらトレードすることも必要だと思います。

トレード用語で俗に言う「ダマシ」に引っかかりやすい人は、特に気を付けておくといいかもしれません。

指標発表直後はチャートの理論など通用しない

指標発表というイベントには要注意

上の項目の「相場が人間心理によって常に行き過ぎる」ことに関係して、注意すべき点があります。
それは、指標発表直後の値動きです。

僕は基本的に雇用統計などの重要な指標発表がある時はトレードしないようにしています。
なぜなら、「指標発表とはファンダメンタルズが変わる瞬間」でもあるので、そういった時は、僕のような「チャート重視のテクニカル分析派」にとっては最悪の時間帯となります。

なぜなら、

僕が指標発表時にトレードしない理由

「指標が発表される」→「ファンダメンタルズが変わる」→「群集の心理が動揺する」→「適正なレートを求めて右往左往」→「チャートの理論など無視して右往左往」

これでは論理的なトレードなど出来ません(笑)
なので、基本的には指標発表時はトレードを避けるべきだと思っています。

テクニカル分析派は、相場が平穏な時にいくらでも稼げるチャンスがあるわけですから、指標発表時にあえてギャンブル的なトレードをする必要はないでしょう。

指標発表というイベントには要注意

指標発表時の値動きについて、もう少し深掘りすると、「指標発表によって経済のファンダメンタルズが変わるタイミング」を利用して、「一発当ててやろう」というギャンブラーが為替市場に数多く参入してきます

この「ギャンブラー的トレーダーたち」は、そもそも長期投資といったことは頭になく、ただ単に「手っ取り早く儲けたい」と考えている連中なんです。

そのために、雇用統計時などは特に「足の短い資金」が増えます
指標発表直後に大きく動いたレートが、あっという間に元に戻ってくるようなケースは、「彼らが利益を確定して、早々に相場から立ち去って行く姿」でもあります。

繰り返しになりますが、僕は「重要な指標発表時のトレードはお勧めしません」が、どうしてもやってみたいという人には、

  1. 失ってもいい資金をあらかじめ決めておくなど「資金管理」を徹底すること
  2. ギャンブラー的トレーダーたちの「資金は足が短い」ことに留意すること

以上を必ず守るようにしてください。
なにしろ、指標発表直後にチャートの理論など通用しないわけですから。